空港内は連休初日という事もあり、思っていたよりも人が多い、ロビーで待つお客を見つけられるかと心配になる。
相手の番号は聞いてきているので、スマホで確認しようとバッグの中に手を入れた。
「あ、あれ? ちょっと待って、あれれ?」
部屋を出る前に確かにこのバックに入れたはずなのに、何度探してみてもスマホが見つからない。送迎車の中にでも落としたのだろうか?
車に取りに戻るわけにもいかず、琴はそのままルビーへと向かう。加瀬という名の若い男性だと聞いているので何とかなるだろう、そう思いながら。
しかしロビーには人が多く、スーツ姿の若い男性もたくさんいた。琴がどうしようかと悩んでいると、後ろから肩を叩かれる。
振り向くと茶髪の男性が笑顔で琴に話しかけてきた。
「お姉さん、どこかの旅館の人? もし空いてるのならお姉さんのとこに泊まりたいんだけど」
「えっと、それは……」
連休初日という事もあり、琴の働く旅館も今日は満室だと聞いている。この男性は琴の探している男性ではないようで、今日の宿が決まっていないようだった。
一度父に相談したがいいのか、そんな事を考えていると……