「そうなのかもしれない、でも駄目なの。彼を前にすると、どうしても意地を張ってしまって」
「ジュリさん……」

 こんなにも美人で気遣いのできる魅力的なジュリアが、少女のように恋に悩んでいる。その様子が(こと)の胸をキュンキュンさせる、恋のそれとはまた違うが堪らない気持ちになる。
 ジュリアならどんな男性だって夢中に出来そうなのに、好きな異性にだけ素直になれないなんて。

「私、協力します! ジュリさんの恋を応援しますから、何でも言ってください!」
「……本当にいいの? 琴に迷惑かけてしまうかもしれないのに」

 琴が迷惑してるのはルカの行動くらいなものだ、ジュリアから何かを頼まれたとしても彼女は迷惑だなんて思わない。だから気にしないでいいと言うように、笑顔で頷いて見せる。
 まあ、今のままでは頼まれなくても余計なお節介をやいてしまいそうな勢いだったが。そんな琴の様子に安心したのか、ジュリアは……

「じゃあ、お願いしてもいいかしら。今から、彼がここに来るのよ」
「……え? 今からルカ先生が、ここにですか」

 そんな話は聞いてない、そもそもジュリアとルカは外で会う程に仲が良かったのだろうか? そんな疑問を持った琴の肩に、ポンと手が置かれた。
 ……男の手だ。加瀬(かせ)のそれとは違う、男性の掌の感触に琴はゾッとした。

「ハイ、琴。これで貴女とゆっくり二人で話せますね」

 聞き覚えのある声、琴の肩に手を置いたのは……先ほどまで話していたルカ本人だった。