「すっごく可愛い、食べるのがもったいないくらい!」
皿に並んだいくつかのマカロンはどれもカラフルで、綺麗に飾り付けられている。その隣にはサクランボの形をしたタルト、見ただけで胸がときめくような可愛らしさだ。
こんなお洒落なデザートを前にして、何ともない顔をしてコーヒーだけを口に運ぶ加瀬の方がどうかしている。琴はそう思ったがわざわざ口にはしない、彼が彼女のためにこの店に入ったことは分かっているから。
「志翔さんは食べないんですか? マカロンもタルトもこんなに美味しそうなのに」
「いい、俺は甘い物は好きじゃない」
確かにこの顔と性格で甘い物が好きだと言われても、ちょっとビックリするだろう。彼らしい答えに納得しながら琴はタルトを口に運ぶ。
ふわりと口の中に広がるサクランボの酸味と甘み、頬が落ちるかと思うほどだった。琴はフォークでサクランボのクリームを掬うと、その手を加瀬の口元へと伸ばす。
「このサクランボのクリームはそんなに甘くないです。すごく美味しいので一口食べてみてください!」
「お、おい……」
すぐに突き返される覚悟をしてたのに、意外な事に加瀬は戸惑うような顔でフォークを見ている。ならばと、琴が彼の唇にそれを押し付けると加瀬は覚悟を決めたようにそれを口へと入れる。
――あれ? これってもしかして間接キス?
気付いた時には、加瀬にニヤリと微笑まれていて。自分からそうしたのだと分かって、琴の顔が一気にか紅く染まった。