「なに?どうしたの?」

階段の踊り場、久々に彼と話した。

1年生の頃は、同じクラスだったから、よく話していた。

だけど、2年生になってからは、クラスが端と端に別れちゃって、話せてなかった。

だから、話せて嬉しい。

「いや、お前には言った方がいいかなって思って」

「なにを?」

「あのさ、俺、病気なんだ」

時間が止まった気がした。

でも、あることを思い出し、また時間は進み始めた。

「あ、あれでしょ?この前、日向和さ、前もあったよね、こんなこと。バスケのやりすぎで、オスグッドになったって。またそういう系?」

私は、声を震わせながら必死に言った。

すると、彼は儚く微笑んだ。

「いや、俺、あと、余命1年なんだ」

今度こそ、時が止まった、色もない。

モノクロ世界。

「あ、いや、でも、さ、あるでしょ?余命1年でも、何年も生きた人いるでしょ?お前が病気?自称アレルギーなし人間のくせに?ねえ、嘘だと言って…今なら許すから…」

目から涙がボロボロこぼれていた。

でもそんなの拭う気は無い。

私は、ただ、彼の腕を力なく掴んでいた。

「嘘じゃない。本当なんだ…これを言ったら分かるかな?この病気、発症してから1年以上生きた人はいないんだよ」

「え?」

情けない声が出た。

確か、前にテレビでやってた。

余命1年と宣告され、それ以上生きた者は1人もいない。

まだ、治療法も薬も開発されてない。

そんな病気あったな…

「そういうことだから…じゃあな」

なんだか、今にも消えそう。

今、ここで言わないと後悔する。

それに、ここで動かないと、もう会えない気がする。

「日向和!」

「なんだよ」

「私、お前のことが好きだったの。こんな日に、なるまで言えなかったけど、好きなの。君のことが…だから、だから、付き合ってください…」

「…確かに、俺もお前のこと好きだったよ?でもよ、余命1年の彼氏なんて要るか?要らないだろ?」

「要るよ!だって、私は君といるだけで幸せだもの」

「…どうせすぐ別れることになるだろうけど、まあ、いいよ。付き合おう」

そして、こんなかたちで私たちは付き合うことになった。

私は、家に帰った後泣きまくった。

あんな告白したくなかった。

けど、あの時じゃないと、次の機会はきっとない。

好きな人の余命1年。

そんな、衝撃事実を知った。

まだ、夏は始まったばかりだ。