若旦那の恋は千鳥足

(あ、あの人…!)



そう、建物の影にいたのは、先日、レストランにいた『殺し屋』だった。



目が合ってしまい、その視線を外せずにいたら、『殺し屋』が歩き出して…
私の方に歩いて来る。
ま、まさか…私をこ、殺しに…!?
逃げ出したいのに、怖くて足が動かない。
ど、どうしよう!?



「だめじゃないか。中にいないと!」

「え?」

不意に聞こえた声は、柚希さんのもので…



「だ、出して下さい!」

私は助手席に飛び乗り、声を上げた。
柚希さんは、何も言わずに車を走らせてくれて…



まだ、心臓が飛び出しそうになってる。



「どうかしたの?何かあった?」

柚希さんは私の異変に気付いたみたいだ。
どうしよう?
なんて言えば良い?
レストランの時は、結局、関係ないと思ってたから『殺し屋』については何も言ってないし。



「え、え、えっと……
と、トイレに行きたくて。」

焦った私は、なぜだかそんなつまらない嘘を吐いていた。



「そうなの!?」

呆れたみたいに柚希さんが驚く。
なんか恥ずかしいこと、言っちゃったな。
でも、後悔してももう遅い。



「コンビニに寄ろうか?
それともカフェかレストランに寄って、ご飯食べて帰る?」

「え、えっと…
じゃ、レストランに。」

今日は落ち付いて料理が出来そうになかったから、私はそう言った。