若旦那の恋は千鳥足

「着いたら、早めに準備して帰ろう。」

「はい、そうですね。」

口ではそう言ったけど、本当はまだ居たい。
数日、泊まって観光したい気分だけど、仕事もあるし、そうもいかないよね、
あと一日なら、泊まっても大丈夫なんだけど、柚希さんは早く帰りたがってるから無理だよね。
そんなことを考えてるうちに、タクシーは家に着いた。



「あ!兄さん!大変や!」

タクシーを降りたら、夏希さんが駆けてきた。



「大変って…どうかしたの?」

「とにかく、はよはよ、こっちや!」

夏希さんの剣幕に押されて、私たちは慌てて母屋に走っていった。







「あら、柚希さん…お帰りなさい。」

お座敷にいた女性が、優雅に微笑む。



「麗華…なにやってんだよ!」

そう…お座敷には、麗華さんがいたんだ。
駐車場で会った、あの麗華さんが。



「柚希!一体どういうことなん!?
この人、あんたの婚約者やってゆーたはるで。」

雪乃さんが、少しイラついた様子でそう言った。



「この人は婚約者でもなんでもない。
僕が結婚するのはひとみさんだ。
さぁ、帰ってくれ!」

「よくそんなことが言えるわね!
私はあなたと三年付き合って来たわ。
あなたとは夫婦同然の付き合いをしてたし、私はあなたと結婚するものと思ってた。」

「それは君の勝手な考えだ。
僕は君と結婚するなんて、一言も言ってない!」