若旦那の恋は千鳥足

「そろそろ帰ろうか?」

「え?山頂には行かないんですか?」

「行きたい?」

「はい。」

「じゃあ、行こうか。」

「はいっ!」



(えーーー…)



しばらく登った時点で、私は完全に後悔していた。
だって、こんなにきつい道だなんて知らなかったんだもん。
しかも、この炎天下。
汗は吹き出すし、足は痛いし…
登っても登っても山頂に着かないし。
それなのに、柚希さんは平気な顔をして登ってる。
一体、どうして!?



「ゆ、柚希さん…
ちょ、ちょっと休みませんか?」

「そうだね。ちょっと休もうか。
もしかしてお腹もすいたんじゃない?」

「え?お腹は…」

答えかけた時にお腹が鳴った。



しばらく行くと、うどん屋さんがあった。
柚希さんは、私が何も言わないのにうどんを注文した。
まぁ、確かにお腹はすいてたような気はするけど。



ベンチに腰掛け、お茶を飲んだら、飲んだ分が全部汗になって吹き出した。



「すごい汗だね。」

柚希さんは涼しい顔でそんなことを言う。



「ゆ、柚希さんは、どうしてなんともないんですか?」

「あぁ、僕は子供の頃、よく登ってたからね。
いつの間にか慣れたみたいだよ。」



子供の頃はともかく、今はもう大人だし、長い間登ってないだろうに、なかなかタフな人だね。



「昔は今みたいに観光客も多くなかったし、ここにはしょっちゅう遊びに来てたんだ。」

すごいね。こんな有名な場所を遊び場にするなんて。
柚希さん、きっと元気な子供だったんだろうな。