若旦那の恋は千鳥足





「もうすぐだからね。」

「は、はい。」



どうしよう。
偉いことになってしまった。
私の荷物を持った柚希さんは、さっさと地下に向かい、私はその後をちょこまか着いて行ってたんだけど、着いた先には左ハンドルの青い車があって…
柚希さんは、扉を開け私の荷物を置いて…



「あ、あの、私、電…」

「早く乗って。」

「え?」



私は電車で帰りますと言いきらないうちに、押し込まれるように私は助手席に座らされ、エンジンが掛かった。



「住所は?」

「え、え、えっと…」

「ナビに入れるから、早く。」

「え、は、あの…えっと…ですから…」



だめだよ。
初対面の人に個人情報を、それも住所を教えるなんて!
私にもそのくらいの常識はある。
なのに、はっきり断れない自分の優柔不断さに苛々する。



「あ!そうだ!
僕ん家で、晩御飯食べようか?
うん、そうだね。
それが良い。」

「え?」

柚希さんはまた勝手にそんなことを決めて、車は滑るように走り出した。



僕ん家って…
初対面の人の家に行くって、どうなのよ!?
って、その前に、私、初対面の人の車に乗ってしまってる!
どうしよう!?
でも、まだ明るいし、いざとなれば、スピードが落ちた時に車から飛び降りるってことだって…