若旦那の恋は千鳥足





「え、ええぇーーー……」



タクシーを降りて、とりあえず、私はその建物や敷地の広さに驚いた。
何、なに?
まさか、これが一軒分!?



「……どうかしたの?」

「え、だ、だって…」

「さぁ、行くよ。」

柚希さんは涼しい顔で歩いて行く。
酒蔵って聞いてたから、すごくお酒のにおいがするのかと思ってたけど、意外な程、何もにおわない。



「若旦那!」

出会った年配の男性が、目を丸くしていた。
私の方こそ、びっくりしたよ。



「あぁ、源さん…久しぶりだね。」

「久しぶりやおへん。
こんな長いこと、家空けて。
今までどないしてはったんですか。」

「え?聞いてないの?
僕は東京に…」

「それはもちろん聞いてますけど、こないに長いこと帰って来はれへんなんて、おもてもなかったもんどっさかい。
……若旦那、こちらのお方は?」

「あぁ、婚約者の岡田ひとみさん。
僕、結婚するんだ。」

「えぇっ!そうどしたんか。
そりゃまぁめでたいこっちゃ。
結婚して、こっちに帰って来はるんですな。」

その言葉に、柚希さんは苦笑した。
そうだよね。
京都に帰るって話は聞いてないから、多分、帰らないんだよね。