若旦那の恋は千鳥足

「とにかくそういうわけだから、今までのような付き合いは出来ない。
わかってくれるね?」

「はぁ?
そんな一方的な話がある?
私は別れないわよ。」

「慰謝料なら払う。」

「何言ってんの?
私はお金には困ってないこと、あなただって知ってるでしょ?
私はお金なんていらないの。
あなたがいてくれたら、それだけで…」

麗華さんは、柚希さんの胸にしなだれかかった。
柚木さんはそれをそっと押し戻す。



「君らしくないね。
僕達の付き合いは、最初から割り切ったものだったはずだよ。」

「私はそんなこと思ってなかった。
何度も言ったはずよ。
将来はうちの病院に入ってって。」

「それは、君の実家の病院で働いて欲しいってことだろう?」

「違うわ!私と結婚して、うちの病院を継いでくれってことよ!
そんなこと、わかるはずだわ!」

麗華さんは声も表情も、どんどん感情的になって…
それに反して、柚希さんはとても冷静だ。
冷静過ぎて怖いくらい。



「僕は、君と結婚するなんて一言も言ってないし、考えたこともない。
さっきも言った通り、僕は近々この人と結婚する。
だから、もう君とは付き合わない。」

清々しいまでにキッパリと柚希さんはそう告げて…



「……行こう。」

「え……」

私の手を取り、柚希さんは歩き始めた。



「許さない!
絶対に許さないから~!」

麗華さんの絶叫が、駐車場に響く中、私達はエレベーターに向かって歩き続けた。