若旦那の恋は千鳥足

「結婚したら、毎日美味しい料理を作って貰えそうで楽しみですよ。」

柚希さん、そんなこと言われたら、キュンと来ますから~



お父さんはまだどこか心配そうだったけど、とりあえず、和やかな雰囲気のまま、時間は過ぎて…
結婚式の話も出たし、やっぱりどう考えても、柚希さんは本気みたいに思える。
それとも、結婚詐欺師っていうのは、こういうものなの!?



「じゃあ、また連絡するね。」

「はい。」



私はそのまま実家に残って、三人で柚希さんを見送った。







「はぁ~…まさか、勅使河原酒造の若旦那だったとはなぁ。」

お父さんはそんなことを言いながら、ソファーに深く腰掛けた。



「ねぇ、お父さん…勅使河原酒造ってそんなに有名なの?」

「はぁ?おまえ、何言ってるんだ?
日本でも、一、二を争う老舗の造り酒屋だぞ。
なんで、そんなことも知らないんだ。」

「えーっ…そんな事言われても…」

知らないものは知らないんだから仕方ないよね。
私は、そんなにお酒も飲まないし。



「格式のある家だから、結婚したら苦労するんじゃないか?」

「あら、お父さん。
柚希さんは、実家は継がないっておっしゃってたじゃないですか。」

「継がないとはいえ、法事だなんだって、きっと実家を訪ねることはよくあるだろう。
その度に、ひとみが辛い想いをするんじゃないか?」