若旦那の恋は千鳥足

「おまえ、そんなことは先に言わないと。」

「え?わ、私…」

だって、柚希さんの実家が造り酒屋だなんて今知ったし、それが有名(?)な酒屋さんだとも知らなかった。



「勅使河原さん、お家柄が釣り合わないんじゃないですか?」

「そんなことありません。
そもそも、僕は実家を継がずに眼科医をしているのですから、そのようなお気遣いは無用です。」

「だけど…なぁ。」

お父さんは困ったような顔をお母さんに向けた。



「勅使河原酒造さんは、確かご兄弟がいらっしゃるんですよね?」

「はい、姉と弟が、実家を継いでます。
だから、僕は好きなことが出来るんです。」

「なるほど。でも、本当に良いんですか?
ひとみは特に頭が良かったわけではなく、習い事もたいしてやりませんでしたから、何も出来ませんが。」

「でも、お料理だけはうまいんですよ。
この子はまだ幼稚園児の頃から、お料理を始めてたんです。
小学生の頃には、もう夕飯を作れる程で…」

お母さん、ありがとう。
確かに、私が誇れるものって言ったら、料理くらいしかないからね。
フォローしてくれたおかげで、ちょっとだけ元気が出たよ。