若旦那の恋は千鳥足





「本当に良いんですか?」

不動産屋さんからの帰り、私達は近くのカフェでお茶を飲んだ。



「おかしなことを言うね。
君が選んだんだよ。」

「そ、それはそうですが…」

不動産屋さんで、クリニックに良さそうな物件をいろいろ見せてもらって…
その中で気になったものを内見させてもらって…
で、その中でも良いと思ったところを柚希さんに見せたから、確かに私が選んだ所なんだけど。
でも、まず、こっちに住むことを承諾してもらえるかどうかはわからなかったし、まさかこんなに早く話が進むとは思ってもみなかった。
柚希さんが気に入った所は、私が選んだ中でも一番高い所だから、私もパートくらいはやらなきゃね。



「どうかしたの?」

「い、いえ、なんでもありません。」

「これから忙しくなるね。」

「そうですね。
……柚希さん、本当に良いんですか?こっちに帰って来ること……」

柚希さんは、失笑する。



「そんな風に念を押されたら、気が変わるかもしれないよ。」

「あ、す、すみません!」

「冗談だよ。
きっと潮時だったんだと思う。
僕も意地を張るのに疲れてた。
でも、引っ込みが付かなくなってた。
君がきっかけをくれなかったら、僕は自分の気持ちを偽りながら、意地を張り続けてただろうと思うよ。
だから…ありがとう。」

そう言って、柚希さんは私の両手を握り締めた。