若旦那の恋は千鳥足





「そろそろ出かけましょうか。」

「うん、そうだね。」



前の晩から言っておいた。
「明日は私に付き合って下さい。」と。
柚希さんは、その申し出を快諾してくれた。



柚希さんは知らない。
私がどこに行くのか、を。



「ねぇ、どこに行くの?」

「すぐにわかります。
あ、来た。」

私達の前に、一台の車が停まった。



「今日は、よろしくお願いします。」

「こちらこそ。さ、お乗り下さい。」

柚希さんは怪訝な顔をしたけれど、素直に車に乗ってくれた。



車は、10分程で目的地に着いた。



「まずは、ここです。」

「ここは?」

「以前は内科のクリニックだったんですよ。
バス停からもすぐだし、この近くには高校もあります。
それに、広さも十分あります。」

「……どういうこと?」

私ではなく、車を運転した人が答えたからか、柚希さんはかなり戸惑っていた。



「二階が住居スペースになってるんですよ。
外階段から、そして、クリニックの奥からも繋がってるんですよ。」

「そういうことじゃなくて……」

柚希さんはさらに戸惑ったみたいだ。
私は深呼吸をして…



「柚希さん、おっしゃいましたよね。
住む所は私が決めて良いって。
だから、おととい、不動産屋さんをまわって、めぼしいところを決めてきたんです。」

平静を装ったけど、内心はドキドキだった。
柚希さんは怒るかもしれないし、嫌われるかもしれない。
でも、こうすることが一番だと思ったから。