若旦那の恋は千鳥足

*



「そろそろ出かけましょうか。」

「うん、そうだね。」



前の晩から言っておいた。
「明日は私に付き合って下さい。」と。
柚希さんは、その申し出を快諾してくれた。



柚希さんは知らない。
私がどこに行くのか、を。



「ねぇ、どこに行くの?」

「すぐにわかります。
あ、来た。」

私達の前に、一台の車が停まった。



「今日は、よろしくお願いします。」

「こちらこそ。さ、お乗り下さい。」

柚希さんは怪訝な顔をしたけれど、素直に車に乗ってくれた。



車は、10分程で目的地に着いた。



「まずは、ここです。」

「ここは?」

「以前は内科のクリニックだったんですよ。
バス停からもすぐだし、この近くには高校もあります。
それに、広さも十分あります。」

「……どういうこと?」

私ではなく、車を運転した人が答えたからか、柚希さんはかなり戸惑っていた。



「二階が住居スペースになってるんですよ。
外階段から、そして、クリニックの奥からも繋がってるんですよ。」

「そういうことじゃなくて……」

柚希さんはさらに戸惑ったみたいだ。
私は深呼吸をして…



「柚希さん、おっしゃいましたよね。
住む所は私が決めて良いって。
だから、おととい、不動産屋さんをまわって、めぼしいところを決めてきたんです。」

平静を装ったけど、内心はドキドキだった。
柚希さんは怒るかもしれないし、嫌われるかもしれない。
でも、こうすることが一番だと思ったから。