若旦那の恋は千鳥足

「でも、柚希さんも優しいよね。
そんなことも気遣ってくれるんだね。」

「う、うん。まぁね。」

そうだよね…柚希さんは優しい。
気も遣ってくれてる。



おかしいな。
嬉しいはずなのに、胸の奥に何かがひっかかってる。



「この、幸せ者!」

由香が私を肘で小突く。
私は顔では微笑みながらも、胸の内は違った。



「由香…あ、あのね…」

「何?」

やっぱり、言えない。
私と柚希さんは、割り切った関係で結婚するんだってことが……



「引っ越した方が良いかな?
そ、それとも…ベッドだけ買い替えるとか…」



ベッド…?
自分で言ったことなのに、なんだか生々しくて、気分が悪くなった。



柚希さんは、今までの彼女さん達とも割り切った関係だったんだよね。



柚希さんに、本当の愛はないんだろうか?
私は、割り切って暮らせるんだろうか?



「ど、どうしたのよ!?」



由香に驚かれて気が付いた。
いつの間にか、涙を流してたことに…
だめだ、泣いちゃ…
由香に変に思われる。
そう思うのに、止めようと思えば思う程、涙は溢れて来る。



「ひとみ…何かあったの?」

「ご、ごめんね。た、ただのマリッジブルーだから…」

無理に笑おうとしたけれど、ただ顔が引きつっただけだった。