若旦那の恋は千鳥足

「どうして、泣いてるの?」

柚希さんは、私の涙を指で拭った。



「それは……」

どう言えば良いんだろう?
私自身、まだ気持ちの整理が付かなかったせいか、すぐには答えられなかった。



「僕は、納得したつもりだった。
だけど、やっぱり今でも雪姉や夏希を羨ましく思うことがあるんだ。
なんて、情けない奴なんだろうね。
半ば、意地みたいになって、東京にしがみついて…
馬鹿みたいだよね。」

「わ、私は馬鹿みたいだなんて思いません。」

「……君は本当に優しいね。」

優しくなんてないよ。
ただ、私は柚希さんが好きなだけ。



「今の話聞いて、僕のこと、嫌いにならなかった?」

「いいえ。少しも。」

「君は変わってるね。
あ、僕が眼科医になったのはなんでかわかる?」

「いえ、わかりません。」

「命に関わりたくなかったからだよ。
医者を目指したのも、元はといえば、家から逃げるためだった。
麗華みたいに立派な志や使命感があったわけじゃない。
だから、眼科医になったんだ。
内科や外科に比べたら、命に関わることがうんと少ないから。
……情けないよね。」

「そんなことありません!
目の病気で苦しんでる人だってたくさんいます。
そんな人達にとったら、柚希さんは必要な人なんです。」

柚希さんは、黙って私をみつめてた。