若旦那の恋は千鳥足

「会って二時間で結婚って……」

柚希さんの機嫌を損なわないように、出来得る限りの笑顔でそう言ってみた。



「そんなの、気にすることないよ。
だって、十年以上付き合って結婚しても別れる人達は別れるんだよ。
会って、どのくらいかなんて、こだわる必要はないと思うよ。」

「あは、はは。
で、ですよね。あはは。」

ひきつりながらも、私は笑った。
だって、笑うしかなかったんだもん。
上手く反論出来なくて。
でも、困ったな。
何か、他の手はないか!?



(あ!そうだ!
良い事思い付いた!)



「あ、あの…柚希さん…
じ、実は私……か、か、彼氏が…」

嘘なだけに言いにくかったけど、これで諦めてもらえるはずだ。



「彼氏がいるの?」

「は、はい。」

「大丈夫だよ。僕がきっちり話を付けるから。」

「え?」

話を付けるって…
別れ話をしてくれるってこと?
普通、彼氏がいるって聞いたら、諦めるんじゃないの?
柚希さん、1秒も戸惑った様子さえなかったよね?
なんで~!?



「彼氏の携帯番号教えて。」

柚希さんは、スマホを手にそんなことを言う。
別れ話する気、満々!?
いや、そんなにやる気出されても、彼氏なんていませんから。
どうしよう!?



「そ、そ、そういうのは個人情報ですから。」

「じゃあ、電話かけて、僕と変わって。」

「え、えーっと…
じ、自分でかけます。」

また私は思いっきり笑顔を浮かべた。