余談になるが、僕は今日も彼女の「おやすみ」を聞けなかった。

 ふたりで話しているうちに、いつも通り彼女は眠くなったようで、そのまま寝てしまったのだ。


 でも、恋人になった僕たちには、これからの時間がたくさんある。


「おやすみ、佳煉ちゃん」

 お預けを食らってもどかしい気持ちを昇華させるつもりで、愛しさを込めながらそう呟いた。


 いつか同じ分だけ、僕に返ってきますように。

 そして僕は彼女に手を引かれて朝へ向かうような感覚を抱きながら、眠りに落ちていった。



(完)