短編『ラブミー、秋津くん』



「それはそうと、常盤さん。好きな人とは、うまくいきそうなの?」

 突如投げかけられたその問いを聞き、固まってしまう。


 これは、どっちだ。


 自分のことだって気づいている?

 それとも違う人だと思っている?


「あはは、どうかな」

 彼がどう考えているのかわからないので、こちらもお茶を濁すことしかできない。


「最近ずっと考えていたんだけどさ。あまりこうやって他の男と親しくするのが、よくないんじゃないかなって。相手の男が知ったら、いい気はしないと思うよ」


 冷や水を浴びせられて、頭の中が真っ白になった。

 どうして、そんなことを言うの。


「だから、こういう風に電話するの、ちょっと控えよう」


 どうして――ああ、私が余計なことを言ったせいか。

 私は選択を間違えたんだ。今すぐ訂正すれば間に合うのだろうか。


 違うよ、私の好きな人は秋津くんだから、これでいいんだよ、って。


 でも、秋津くんは電話をやめようとするくらい、私のことを何とも思っていないのが明白なのに?

 そんなことを言ってしまったら、事態が悪化しそうな気がする。


 結局、私は何も言えなかった。

 音がしなくなったスマホをぼーっと見つめる。


 今まで存在を信じて疑わなかった、彼と私を結ぶ糸までプツンと切られてしまったように感じた。