短編『ラブミー、秋津くん』



「秋津くん。私、好きな人ができたよ」

 次はもう本当に恋愛相談することにした。


 本人相手に相談するなんて、滑稽な話かもしれない。

 でも、あまりにも手応えを感じないものだから、手段を選んでいられないのだ。


「ふーん」

 秋津くんは、相変わらず興味を持ってくれない。


「その人ね、全然私に関心がないの。どうしたらいいと思う?」

「その人も、前にタイプだって言っていたような、派手な感じの人なの?」

「うん」


 心の中では違うよ、と答えた。

 秋津くんには届かないけれど。


「じゃあ常盤さんも同じように、元気に振る舞えばいいんじゃない。似た者同士は惹かれ合うって言うでしょ」

「えー? 私は既にいつもこんな感じだし、元気だよ!」


 と言うことは、私は秋津くんみたいに落ち着いた振る舞いを心がけたらいいのだろうか。

 秋津くんに対して言うことと、考えなければならないことが真逆でこんがらがりそうになる。


 でも、秋津くんは明るい人が好きだって言っていたし……。


「ふっ。そうだね」

 秋津くんが笑ってくれる。


 その声を聞いて、やっぱり好きだなあ、と彼に対する想いを募らせた。


 秋津くんがそうやって聞いてくれるから、彼と話していると私はいつも楽しくなって調子に乗り、変なことを口走ってしまう。

 それでも、秋津くんが笑ってくれるなら何でもいいか。