短編『ラブミー、秋津くん』



 2人でベランダに出ると、ちょうどクライマックスだった。


「おー、いい眺め」

 秋津くんは花火を見て目を細めている。


 連続で打ち上げられた大輪を見守った後、私は秋津くんに声をかけた。


「私、秋津くんが好き。来てくれてありがとう」

「……僕、金髪じゃないけど」


 じとっとした流し目で見られる。


「うん。ごめん、あのときは嘘をついちゃった」


「僕も、常盤さんのことが好きだったよ。でも、常盤さんに好きな人ができたって聞いて、その話を聞くのが辛くて、電話するのも苦しくて、身を引かないとって思っていたのに……何だこれ」


 秋津くんは苦笑した。


 本当、馬鹿みたいだ。

 それなら変に回りくどいことをしなければ、もっと秋津くんと一緒の時間を過ごせていただろうに。