短編『ラブミー、秋津くん』



「だ、大丈夫?」

「ごめん、大丈夫。それより、どういうこと」

「え?」

「常盤さんの好きな人って僕なの?」


 息をするのを忘れてしまう。


 そ、そうか。

 確かにそういう意味になってしまう。


 これはチャンスだ。

 このまま想いを伝えなきゃ。


「って、そんなわけないか。ごめん、忘れて」

「秋津くんだよ」

 秋津くんの言葉に被せた。


 返事はない。


「秋津くん、だよ」

 もう一度想いを込めて伝えると、ふっと息を吐く音が聞こえた。


「常盤さんの住んでいるマンションって、あの大きいスーパーの隣だって言ってたよね。ちょっと待ってて。今からそっちへ行くから」

「えっ」


 気づいたときにはもう電話は切られていた。