短編『ラブミー、秋津くん』



 部屋の電気をつけて、棚からグラスを、そして冷凍庫から氷を取り出しつつ考える。


 今電話をかけて、出てくれたら、きっと花火大会には行っていないだろう。

 だからもし出てくれたら、正直な私の気持ちを話そう。

 出てくれなかったら、彼のことはちゃんと諦めよう。


 これで最後にする。


 そう心に誓って、履歴から彼に電話をかけた。


「もしもし」


 出てくれた!

 ということは、私はこれから真実を口にするのだ。


 心臓が早鐘を打つ。


「もしもし、秋津くん?」

 アイスコーヒーを飲もうと思って用意したグラス。

 その中に入れた氷をじっと見つめながら声を発した。


「うん」

 少し掠れた、気だるそうな声の色気にドキッとしてしまう。


「常盤さん、この前に僕がした話、忘れてる? 変わらず結構頻繁にかけてきてくれるけど」

 少し困ったような声だ。