短編『ラブミー、秋津くん』



 せっかくの夏休みなのに、毎日がつまらない。


 何をするでもなくただ部屋でうずくまっていると、ドン、ドン、と遠くの方で音が鳴り始めた。


 そう言えば、今日は花火大会の日だったっけ。

 女友達が彼氏と行くんだ、なんて嬉しそうに話していたのを覚えている。


 電気を消して窓を覗くと、ちょっと小さいけれど、その明かりがここからでも見えた。


 秋津くんは今頃、新しくできた恋人と出かけて、あの花火を見に行っているのだろうか。

 そう思うと、胸の内に黒いものが広がっていく。


 嫌だなあ。


 もし、今電話をかけたら出てくれるのだろうか。

 やっぱり出てくれないかな。


 こんなことを考えてしまうなんて、私も諦めが悪い。

 自嘲の笑みがこぼれる。


 秋津くんに迷惑をかけてしまうのは本意ではない。