コンコンコンコン
「失礼します、お嬢様、紬です。」
「はい、」
ベットから起きてドアを開けると、ココアを持った紬さんにぎゅっと抱きしめられた。
「お嬢様、使ってください」
紬さんがポケットからハンカチを取り出し、私の頬に優しく添える。
そこではじめて自分が泣いていることに気がついた。
紬さんのつくるココアは甘い、私の好きな味。
あったかくて、甘くて、ほっとする。
「どうされたのですか。」
隣に来て安心させてくれる。
両親は、去年の冬からイギリス出張で一年近く戻らない。
紬さんはそんな私をお姉ちゃんのように優しく見守ってくれる。
ココアを飲んで少し落ち着いた頃、
「生徒会の副会長になりました…」
最初から本題には行けず。
「・・・副会長ですか?」
「入学早々大変なことになりましたね・・・立候補では…?」
静かに首をふる。
「私は…いいと思いますよ?」
なぜか嬉しそうな紬さん。
「だって…ほら、奥手のお嬢様にとっては沢山の人と関われる良い機会ではないですか?」
鈍感と言われる私にもわかるくらいな、とってつけたような理由。
不自然過ぎます、紬さん。
「それで、その、会長の方とラインを繋ぎたくて…」
「それは…良かったです!」
・・・何がどう良いのかイマイチわからないですけど、紬さんが嬉しいことだけはわかりました。
「あの、なんでそんなに嬉しそうなんですか?」
「さっきまで泣かれていたので…かなり深刻な内容かと思ったのですが、、、
あ、いえ、別に副会長が大したことないと言っているわけでないんですけど、
その・・・とにかく良かったです!」
・・・なんか良かったらしいです。
これではとても、恋愛の話は相談できそうにないようです…。
とりあえず、会長と繋がる許可を頂けたので、良かった?かな・・・。
「あの、それだけなので、もう大丈夫です。ありがとうございました。」
「また、何かあったら言ってくださいね?」
「はい・・・」
力なく頷く私に、眩い笑顔を放ち部屋を去っていった紬さん。
何か裏がありそうだと確信したものの、うまく聞けない自分に呆れる…。
でも、会長とラインを繋げられる、そのことが私にとっては大事件で、すぐに紬さんの違和感のことなんて頭から消えてしまいました。
『会長、私とライン繋いでください』・・・
その言葉を言うことを想像するだけで恥ずかしくなっちゃうし、心臓がトクトクと高鳴る///。
もし、断られたら…不安もあるけど、まずは会長に自分から話しかけられるかな…♡?
家族とメイドさん以外で初めてラインをする相手はるーくんだって、ずっと決めてたけど、るーくん、もう約束守れない・・・。
会長…。
『咲夜、好き♡』
まだ一週間と会っていない人を好きになっちゃったんです。
好きすぎて、、、
また涙が出てくる。
どうしたらいいんだろう、この気持ち…。
好きだけど、好きって言いていいのかわかんないし、それでも好きだから…。
・・・会長を、好きにならせてください…♡。。。
