ぴーまんじゃなくて、ぴーめん

放課後になった。

キャンプの役割決めは意外とスムーズに進んで、残りしおりを書く係を決めたら終わりだ。

「誰かいないか?定員2名までだぞ!これが決まらないといつまでも、終わらないぞー。」

しおり係は全然人気がない。

それもそのはず。

たくさんの文字をひたすら綺麗に書き続けなくてはいけないという、すごくめんどくさい係なのだ。

でも、これが決まらないと終わらないし。

「…はい。私やります。」

「おお!!!!有村!!ありがとう!助かるよ!あと1人いないか?」

「…はい」

そう言って、鈴野くんが手をあげてくれた。

「おお!鈴野、珍しいな!まぁありがとな!じゃあ、これにて解散!」

よかった。

3組は、ついさっき解散したところだから、今行けば間に合う。

(あれ。)

カバンにつけていたはずのキーボードがないことに気づいた。

あれは、蓮が私のためにって、わざわざ作ってくれた物だったから、すごく嬉しくて大事にしてた。

どこに落としたんだろう。

朝来た時は、確かにあった。

もう誰もいない教室を、1人で歩き回って探す。

(ないっ)

教室の外?

そう思って、学校中を探してみる。

それでもない。

教室に戻ってもう一度、教室内を探してみる。

(ないっ、)

「なぁ」

声がする方を向くと、そこには鈴野くんがいた。

「あ、鈴野くんそれ…」

「これ、有村の?」

そう言って、片手にもってるのは、紐がちぎれてしまっている私のキーホールダーだった。

「私のっ、ありがとう!!!!!」

紐がちぎれちゃって落ちたんだ。

あってよかった…

一気に力が抜ける。

「ほんと…ありがとう。どこに落ちてたの?」

「たまたま、階段で見つけた」

「そっか、ありがとう。」

「お礼いいすぎ」

「だって本当に嬉しかったから。笑」

「そんな大切なの?」

「蓮にもらったつくってもらった物だから。」

蓮のことを考えると自然と笑顔になる。

「あ!早く帰らないと行けないんだった!見つけてくれて本当にありがとう!またね!」

もう間に合わないよね。

家まで…行こうかな。