ぴーまんじゃなくて、ぴーめん

ついにきた、日曜日。

今日は楽しむって決めた。

\ピーンポーン/

(鈴野くんだ!)

急いで階段を降りて、玄関の扉を開ける。

「鈴野くんおまたせ!」

鈴野くんの私服姿、初めてみた。

ちょっとかっこいいかも。

「ん」


電車に乗ってる間も無言だった。

でも、苦じゃなかった。

鈴野くんは苦なんだろうな。


結局水族館に着くまで私たちは会話を交わすことがなかった。

水族館につくと、鈴野くんが

「何見たい?」

って聞いてくれた。

私は、生き物の中で1番大好きなペンギンを見に行きたいと言った。

相変わらず返事は「ん」の一言だった。


「きゃー!!ペンギン可愛い!!!」

日曜日なのに、人が少ないことを利用して私は、はしゃぐ。

「あ!見て、鈴野くん!歩いてるよ!可愛いね!」

「可愛い」

「だよねー!私、ペンギン大好きなの!」

「そーなんだ」

「見てみて!ラッコもいるよ!もうちょっと近くで見にいこう!」

そういって、鈴野くんの手を掴んでぐいぐい進む。

「餌食べてる!可愛い!…お腹すいたな笑」

「そろそろ食べに行こう」

「うん!」

「お店もう調べてあるから行こう」

そういって、鈴野くんが連れてきてくれたお店は、パスタ屋さんだった。

「え!このお店入るの!?」

「うん」

「私、パスタ大好きだから嬉しい!!」

「よかった」






「ごちそうさまでした!!」

美味しかった。

「もう3時だから、あとちょっとしかまわれないけど、どこいきたい?」

「お土産、見に行きたいな!」

「ん」

お土産は、家族の分のクッキーと、蓮の分と私の分と陽菜の分と…鈴野くんの分のキーホルダーを買おうかな。

もし、受け取ってもらえなかったら、自分の分にすればいいし。

「あっ、このぬいぐるみかわいい!しかも蓮の好きな水色だ!これ買おっ!ついでに私もピンクでお揃いの買っちゃお笑」

蓮とお揃いのぬいぐるみだ。

やったー。

欲しいものも全部買えてよかった。

鈴野くんも何か買ったんだ。

そういえば、鈴野くんの分も買ったけどいつ渡そう?

電車の中?

まぁ、明日学校で渡せばいっか。

「おまたせ、帰ろ」

「うん!」


電車に乗ってる時に、どうしても聞いときたかったことを聞いた。

「鈴野くんの最寄駅ってどこなの?」

「相田さんと一緒」

「えっ!そうなんだ!」

「うん」

同じ駅なんだ!

じゃあ、ぬいぐるみ渡せるじゃん!

やったー!

駅から降りてしばらく歩く。

「鈴野くんの家もこっちの方なのー?」

「もう通り過ぎた。でも夜だから危ないから送る。」

「わざわざありがとう!」

「ん」


結局、渡すタイミングもないまま、家に着いてしまった。 

「送ってくれてありがとう。」

「ん、じゃ」

鈴野くんがきたみちを戻ろうとする。

「まって!」

私は、慌てて鈴野くんの手を掴んだ。

鈴野くんが振り返る。

つい、緊張して顔を下に向けて喋る。

「あっ、あのね。この前は本当にありがとう。今日も…たくさん楽しませてくれてありがとう。…それで、お礼に…今日のお土産のところで買ったんだけど…鈴野くんに似合うと思って…でも、もしいらなかったら、捨ててくれても大丈夫だよっ。…それじゃあ、おやすみ!また明日!!!!!!」

鈴野くんの手に、ぬいぐるみを押しつけて、急いで家に入る。

顔も見てないから、どんな表情をしてたのかもわからない。

…嫌がってないといいな。