「貴方、私のことが見えるんですね」
「え?」

彼はそう言うと、さらさらと電柱の上へ登っていった

「?!?!ゆ、幽霊?!え…?!幽霊…?!」

びっくりしすぎて何回も言葉を連呼してしまった…。

「いまさらですか?…私、死んでいるんですよ」

彼はそういうと私のバックの中から顔だけだして

「何年前に死んだのかは分からないけれど、もう随分経ってしまったようです。貴方みたいに、私のことが見える人…いないから…嬉しい。」

頬を赤らめながら話してくれた。
美形だからか、嬉しいと言い微笑んだ顔にキュンとしてしまった。

「帰る場所も、もう取り壊されてしまって…友達も親もいません…」

瞳を潤ませて、私の方を見る



「………なら…私のところきますか?」

考えるよりも先に言葉が出てしまった。

「え!!!いいんですか!いきます!一緒にいさせてください!!」

全てが計算通りかのように、大げさなほどに喜び、彼は私の後についていった。
と、いうか私の傘に乗ってきた…

なんだか、面白いことになってしまったな。

ここ最近毎日がつまらなくて、今日も無感情のまま1日を終えようとしていたからか、とてもどきどきしてしまう。これが、夢でなければいいが…いや、夢ならもう少し長く見させてくれさえすればいい。

初対面のよくわからない男を連れ込むというだけでも可笑しいのに、幽霊だなんて、周りの人に知られたら大変なことになってしまうな

「ふふ…」

何日ぶりかに自然と笑みが溢れてしまった。


ーーーー私と幽霊な彼との生活が始まった。