死んでしまった彼との話

あの日から、一年が経とうとしていた。
それまで、何故か、すっきりしたのか、まったく辛い思いはしなかった。
大好きな人を失ったというのに、まだ心のどこかで『また先輩が笑いかけてくれる』そんなことを思っていたのかもしれない。


⿻*⌖.:˚◌˳˚⌖

「わ〜たぬきさん!」
「わっ、須藤くん…どうしたの?」
「最近どうよ?彼氏とは!」

あれから、ほぼ毎日のように彼氏…水無月先輩について聞いてくる。
その度に、「元気だよ」としか答えていなかったが、その日は何故か

「喧嘩して、別れた」

そう、言葉にしてしまった。
実際は、付き合ってすらいない相手なのに。
水無月先輩に非なんてないのに。

「もう、会えないや〜あはは」
「…て」
「え?」
「うっ、なんで笑ってんのぉ〜?俺、振られたんだよ?その空想の彼氏のせいで…なのに…ひっく」

な、泣いてる?!

「俺にしなよもう………」
「須藤くんはチャラいから…」
「えーー?ひっ、うっ、」

みっともないですね、きっと彼が相手なら私はそう言うだろう。ただ、須藤くん相手にはそんなことは言えなかった。

「でも、だよね…あんなにっ、おっ、お似合いの二人が喧嘩するんだもんね…俺らじゃ、駄目、だよね…ひっく」
「須藤くんは優しいね〜。」
「えっ?」
「彼はね、何も言わずにいなくなっちゃったんだよ〜。そんなふうに、泣いてもくれなかった」

「あんなやつ、捨ててやって当然。こっちから願い下げよ」

先輩は何も悪くないけれど、もう、これで、この世界での先輩への思いは終わりにしようと思った。

『ごめんね、水無月先輩』