翔は見下すように壱成に目を向ける。壱成は「は?」と顔を真っ赤にしながら怒鳴った。

「ふざけんな!結衣は俺の彼女だろ?俺のために家事をして、俺のために金を稼ぐ、それがコイツの幸せだろ?俺にとって幸せはそういうもんだ!それなのにあいつはーーー」

壱成は聞いてもいないのに、ベラベラと結婚した相手のことを話し出す。壱成は結衣が見た浮気現場で見た女性と結婚したものの、結婚してから彼女は家事をせず、おまけに壱成のようにフリーターのため、お金もなくて貧乏生活だったらしい。そのため喧嘩が絶えず、離婚調停中のようだ。

話を聞いていて、結衣は悲しみよりも怒りが込み上げてきた。何故こんな男に怖がっていたのだろう?あの頃、この男に気に入られようと努力していたのだろう?この男はただ、自分に貢いでくれる奴隷がほしかっただけだ。そう思うと、もう何も怖くなどない。

結衣は翔の前に立ち、壱成を冷たい目で見る。壱成は期待したような目をしたものの、結衣は「帰って!もう二度と私たちの前に姿を見せないで!」と口を開く。