王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-


「ああ、割合近場だからな。お前の尻が痛くなる前に着く。フリード、リック、連れの女どもを乗せてやれ」

「は、承知……」

「ペペロネさん、こちらにどうぞ」

 フリードがペペロネを、リックがキャンディを乗せている。ふたりとも真っ青だった頬が真っ赤に変化しているのを見て、シルディーヌはほくそ笑んだ。

 二組ともとてもお似合いである。このピクニックで距離が縮まり、ペペロネに至っては関係が一歩進めばいい。

 どうにかして二人の後押しをしたいシルディーヌである。

 馬にゆられて間もなくピンクルの湖に着き、シルディーヌは一番にボート遊びに誘った。

「アルフ、みんなでボートに乗りたいわ」

 ボートは手漕ぎで、乗れば必ず向かい合うのだ。水上でふたりきりになれば、自然と会話が生まれるだろう。キャンディはリックと親しくなるチャンスである。

 だがしかし、ボートは二艘しか空いておらず……。

「い……いいわ。私たちは後にするから。先に弁当を食べるところを探すわ。ペペロネたちはゆっくり楽しんでね」

 がっくり項垂れつつもふたりに譲り、アルフレッドと草原を歩く。草がさわさわと風に揺れて、のどかでとても気持ちがいい。