そう言ったきりアルフレッドは動かない。空色の瞳だけが、キラキラと輝く翡翠色の瞳、ばら色に染まった頬と赤く色づいた小さな唇、可愛らしく着こなしたワンピースへと動いていく。
鬼神の団長が見せるデレッと甘い雰囲気に、ペペロネたちは俄かに驚いている。だって、あの恐ろしい黒龍の団長の体から、無数のハートが飛んでいるように感じるのだ。
「ねえ、キャンディ? 団長が甘く穏やかに見えるわ。私の目の異常かしら?」
「大丈夫よ、ペペロネ。きっと錯覚じゃないわ。私にもそう見えるもの」
ふたりは手をしっかり握り合い、お互いの見ているものを確認し合う。
じっと動かずに、ただただシルディーヌを見つめる鬼神の団長の姿。可愛い恋人に見惚れているのが丸わかりだ。
しかし、アルフレッドの強大な愛情がザバザバ降り注いでいるのに、当のシルディーヌはほぼ感じていないようなのが不思議である。
初デートの胸のときめきが、アルフレッドへの畏怖とシルディーヌの鈍感さにさらわれて、好きな人と相対する緊張感がほぐれたのはよかったのか。ペペロネとキャンディは複雑な気持ちになっていた。
「アルフ、今日は馬で行くのでしょう?」

