王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-


 内容が仕事に関することではないので、少し口ごもってしまう。ふざけたことだと、叱られてしまうかもしれない。

 でも、それでも! と自分を鼓舞する。

 大切な友人たちの思いを成就させたいから、シルディーヌが頑張るしかないのだ。

「なんだ、忙しいんだ。さっさと言え」

「リックさんって、決まったお相手がいるのかしら?」

 単刀直入に訊くと、アルフレッドはぐっと身を乗り出した。

「なに!? リックだと? どうしてお前がそんなことを訊くんだ。あいつに興味があるのか!」

「違うわ。パレードの事件の時、私の侍女仲間のキャンディがリックさんに救われたの」

「それが、なんの関係があるんだ」

 キャンディは逞しい腕に抱きとめられて『大丈夫ですか?』と優しく尋ねられて、胸がときめいたらしいのだ。一夜明けて落ち着いてもリックの顔が頭にチラついて、ドキドキが収まらないと言っていた。

 完璧に、恋している。

 とうとうキャンディにも! とシルディーヌは大いに喜んだのである。

 ペペロネ曰く、騎士団員の逞しさと優しさのギャップは、どんな女性も参ってしまうものらしい。