「私だって、手がふさがってなければ、ノックくらいするわ」
「今日はアマガエルの膨れぶりが見えないが、なんの用だ? 食堂清掃のことなら、団員がマメに片づけていたようだな。思ったほど不潔じゃない」
「え……そうなの?」
一応、アルフレッドは気にかけて見てくれていたのだ。いつもはとても厳しいことをいうのに。
意外に思っていると、アルフレッドは「勘違いするな」とのたまう。
「遠征から戻ったときに宮殿内をチェックするのは、いつものことだ。食堂もその一環で確認しただけだ」
──そうよね、それがアルフよね。
アルフレッドの様子は、すでにいつもの仕事の鬼モードになっている。
「どうした。なにか話があって来たんだろう。仕方がないから、聞いてやる。そこに座れ」
アルフレッドはソファを指して、自身もドカッと腰を下ろした。
腕を組み、じっとシルディーヌを見つめる。その威圧感たるや、久しぶりに対面するだけに凄まじいものがある。
けれどシルディーヌは怯むことなく、まっすぐに見つめ返した。だって、これがいつものアルフレッドなのだから。
「あのね、話というよりも、アルフに訊きたいことがあるの」

