王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-


「私だって、手がふさがってなければ、ノックくらいするわ」

「今日はアマガエルの膨れぶりが見えないが、なんの用だ? 食堂清掃のことなら、団員がマメに片づけていたようだな。思ったほど不潔じゃない」

「え……そうなの?」

 一応、アルフレッドは気にかけて見てくれていたのだ。いつもはとても厳しいことをいうのに。

 意外に思っていると、アルフレッドは「勘違いするな」とのたまう。

「遠征から戻ったときに宮殿内をチェックするのは、いつものことだ。食堂もその一環で確認しただけだ」

 ──そうよね、それがアルフよね。

 アルフレッドの様子は、すでにいつもの仕事の鬼モードになっている。

「どうした。なにか話があって来たんだろう。仕方がないから、聞いてやる。そこに座れ」

 アルフレッドはソファを指して、自身もドカッと腰を下ろした。

 腕を組み、じっとシルディーヌを見つめる。その威圧感たるや、久しぶりに対面するだけに凄まじいものがある。

 けれどシルディーヌは怯むことなく、まっすぐに見つめ返した。だって、これがいつものアルフレッドなのだから。

「あのね、話というよりも、アルフに訊きたいことがあるの」