「彼女たちは、一様に『脅かすだけのつもりだった』『王宮内の笑いものにしたかった』と申しましたが、自分勝手な思いで起こしたことが悪質すぎます。一歩間違えば大けがだったのですから、酌量の余地もありません」
当然の処分だと、侍女長は断罪する。
「あなたたちには、なんの落ち度もありません。これからもしっかり仕事をしてください。私からの話は以上です」
解散なさい、と言われシルディーヌたちは侍女長室を辞した。
「驚いたわ。王太子殿下が直々に処分を下されるなんて。侍女の事件だもの、普通は侍女長の裁量で決まるわよね?」
廊下に出てすぐペペロネが感心したような声を出し、シルディーヌを意味ありげな目で見つめた。
「やっぱり、黒龍の団長さまの恋人だから、かしら?」
「そうよ、きっと団長が『厳しい処分を』って、殿下に進言してくださったのよ! あの冷たくて恐ろしい団長に、そんなに愛されているなんて、素敵よねぇ」
キャンディが羨ましげにため息を吐く。
「そ、そうかしら。アルフは、なにもお願いしていないと思うわ」

