王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-

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 シルディーヌが侍女長からの呼び出しを受けたのは、団長部屋の仮眠室のベッドで目覚めてすぐのことだった。

 人さらい事件のあとのように、クッションの海の中でもがいていたらサクッと引き起こされて、「侍女長から話があるそうだ。侍女長室に行け」とアルフレッドから伝えられたのである。

 いったん侍女寮に戻り、急いで身だしなみを整えて侍女長室に赴くと、ペペロネとキャンディが椅子に座って待っていた。

 侍女長は執務机でなにやら書き物をしている。

「侍女長、遅くなって申し訳ございません」

 慌てて礼を取ると、侍女長は静かに微笑んだ。

「シルディーヌ・メロウ、今回は大変でしたね。南宮殿で起こったことも承知していますから、遅れた詫びはいりません」

 シルディーヌも椅子に掛けるよう促され、ふたりのそばに座った。

「今回三人を呼んだのは、王太子殿下の帰宮パレードで起こった件について、報告するためです」

 侍女長は一つ息を吐くと、書きかけの書類を裏返した。

「今回は、ヘンリエッタほか、数名の侍女が関与していました。彼女らは当時、あなたたちの近くにいたらしいです。覚えていますか?」

「はい、たしかに、王宮付きの方々がそばにいました」

 ペペロネがはきはきと応え、シルディーヌとキャンディは頷いてみせる。