王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-


 宮殿を間違えるそそっかしい侍女はシルディーヌだけではない。『間違えるのはお前くらいだ』と言っていたアルフレッドに、どや顔で教えてあげたいと思う。

「え、それってどういう……?」

「ここは南宮殿だから、あなたは間違えてるわ」

「えええっ、そんなっ。……どうしましょう」

 途端にオロオロと目を泳がせて、ガタガタと震え出した。

 カメリアを見つけたのがシルディーヌでよかったと思う。団員の目に止まっていれば、問答無用で肩に担がれて尋問部屋行きである。

 けれど、ホールにいた団員たちは出動しただろうが、入口には警備が立っているはずだ。カメリアはどうやって入ったのだろうか。

 思考がアルフレッドとの再会シーンのそれとまったく同じで、シルディーヌは苦笑いを零した。彼女はふと警備が外れた時間に入って来たのだろう。そうに違いない。

「とりあえず、早く出て西宮殿に向かったほうがいいわ。あそこの侍従はとっても厳しいらしいから。遅いと激しい叱責を受けるわ。私が玄関まで一緒に行くから、出口までは安全よ」

「えっ、ええ。そうですね。あ、あの、でもその前に、お願いがあるんです」

「お願い? 私に?」