王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-


 だって今は、食堂への出入りを禁じられているのだ。フリードの説明があやふやすぎて、やっぱり、どうにも納得がいかない。

 守るなら、害虫からも守ってほしいのが乙女心である。

 またひとつ、アルフレッドに言うべき文句が増え、心のメモにしっかりと書き止める。

 ぷっくり膨れたまま黒龍殿に着いたシルディーヌを見て、ホールにいた団員たちがざわめいた。

「団長もいないのに、なにがあったんだ」

「俺たち、なにも悪いことしてないよな?」

「ああ、今日の食器はしっかり片付けたぞ」

「俺もだ。テーブルも椅子も綺麗にしたんだ。問題は無いはずだ」

「俺なんか、ナイフ投げで害虫を一匹退治したんだぜ」

「おお~、さすがリックだな」

 ホールに集まった騎士団員たちが、ヒソヒソと互いの健闘を褒め合っているのもスルーして、ずんずん歩いて団長部屋に向かう。

 ばんっと、シルディーヌなりに勢いよく扉を開けても、本人がいないのが哀しい。静まり返った部屋の中、アルフレッドの幻がそこかしこに現れては消える。

「アルフの、バカ」

 クスンと鼻を鳴らして、主のいない机をペシンと叩く。