できることなら、本当に代わってほしいと願う。
「そ、そんなっ、それを、全部、ひとりでこなすなんて……! やはりあなたのような、田舎の令嬢のほうが向いていますのね。わたくしのように、気品ある都会の令嬢のお仕事じゃないですわ。そうよ、仕事と恋愛は別ですものね! そのことが、よく分かりましたわ!」
このお話はなかったことに! と逃げるように去っていくヘンリエッタを複雑な気持ちで眺めた。
「やっぱり、逃げるわよね?」
掃除三昧な日々と、かさかさ動く黒いアイツに遭遇する恐ろしさは、アルフレッドへの恋慕よりも大きいのだ。
幼い頃、アルフレッドにイジワルされて、野山を追いかけられたシルディーヌは、ある意味鍛えられているのかもしれない。
喜ぶべきか、悲しむべきか。
「悲しむべきだわ。私だって、平気じゃないもの」
シルディーヌが大変な仕事をする羽目になったのは、多分にアルフレッドのせいである。
まあ、最初に西宮殿と間違えたのが悪いと言われればそれまでだが、それでも! と拳を握る。

