王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-


 舞踏会でも垣間見た、アルフレッドに恋をする侍女の一人なのだ。彼を慕う女性と話すのは初めてで、ある意味感動してしまう。

 本当に、モテているのだ!

 お勤めの宮殿に行かなくてもいいのかしら? と思いつつ、シルディーヌはヘンリエッタに言葉を返した。

「お仕事に気品と色香は関係ないと思います。アルフ……団長は、とっても厳しいお方ですから、容姿よりも、仕事をこなすことが大切なんです」

「まあ、あなたは、なにをおっしゃってるの? そのお仕事を、わたくしのほうが上手くやれると言っているのです」

 規律を重んじ、刺繍を含めた裁縫に声楽と礼儀作法、どれも一流の教師のもとで習って完璧にできると言って、ツンと鼻を上に向けた。

「ですから、マクベリーさまの身のまわりのお世話は、このヘンリエッタにお任せくださいな」

 ──アルフの、お世話?

 ヘンリエッタは黒龍殿のお仕事を舐めているのだ。南宮殿付き侍女としては、しっかり教えてあげなくてはならない。

 シルディーヌはひとりで清掃をする大変さや、害虫に遭遇する恐ろしさ、孤独に堪える厳しさなど、難儀な仕事の内容をとうとうと話して聞かせた。