突然ツンとした声音で呼び止められて、シルディーヌはビクッと体を揺らした。振り向くと、ブラウンの髪を巻き毛にした侍女がいた。食堂でも侍女寮でも見かけたことがない。きっと、王宮殿近くの侍女寮に住んでいるのだろう。
「はい。そうです」
「そう、やっぱりあなたなの」
見知らぬ侍女はシルディーヌを値踏みするように眺め、フッと笑った。
「禁断の場所に出入りしてるからって、いい気にならない方がよろしいわ」
「……どういうことですか?」
「あなたは相応しくないってことですわ。騎士団の方々──とくにマクベリー団長さまは、気品と色香を兼ね備えた侍女をお求めですもの。あなたは、侍女長に配置換えを求めるべきですわ。そして、このわたくし、ヘンリエッタを推薦しなさいな」
胸の辺りをぽんっと叩いて不敵な笑みをもらすヘンリエッタを、ぽかんと見つめた。
身の内からあふれ出るような自信は、伯爵以上の爵位を持つ家柄なのだろう。
シルディーヌよりも背が高く、胸はペペロネよりも大きい。スタイルにも自信があるのだ。

