背を支えられて起きあがったシルディーヌはしばし呆然としていたが、後からじわじわと恥ずかしさが込み上げてきた。

「アルフったら、ひどいわ。乙女心が傷付くわ」

 ぷっくり頬を膨らませてぷんすか怒ってみせると、アルフレッドは少したじろいだ。おそらく、以前喧嘩した時のことを思い出しているのだろう。

「む……悪かった」

「帰るまで、私からの贈り物を取らないでくれる?」

「贈り物ってこれか………仕方がないな」

 今日はずっと冠を取らないことを約束させたシルディーヌは、そのままボート遊びに誘う。

 恐ろしいオーラを放つワイバーンな顔をした巨人が可愛らしい冠を被り、華奢な女性と一緒に歩いている。誰もが二度見するようなカップルだ。

 そんな視線に構うことないシルディーヌと、ひと睨みで好奇の視線を遮るアルフレッド。ふたりは仲良く船着き場に行き、ボートで水上へと進んだ。

 波がちゃぷちゃぷとボートに当たり、透明な水の底に水草が生えているのが見える。

「ね、アルフ、見て! お魚がたくさん泳いでるわ。でも、残念だけど、アルフの好きなカエルはいないみたい」