王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-


 刹那、ピタッと動きを止めたアルフレッドの表情がみるみるうちにワイバーン化していった。

「なんだ、これは」

「冠よ。とてもよく似合うわ」

「ほう、壁飾りじゃなかったわけか」

 ヤバイ、と思ったのも一瞬。シルディーヌはコロンと押し倒されていた。冠を被ったままのアルフレッドが、暗黒な笑みを浮かべて覆いかぶさってくる。

 ──その顔、怖いんだけど!

「強硬手段を取ってほしいようだな? 望みどおりにしてやろう」

「え、なにを言って……わっ、私はなにも望んでないわっ」

「俺が望んでるんだ」

 それ、おかしい! 

 それに、こんな場所でどんな強硬手段を取るのか。

「ま、待ってっ」

 巨人の体の下でバタバタともがいていると、「コホン」と咳払いが聞こえてきた。

「いけませんね。団長、強行は犯罪です」

「ちっ、戻ってきたか」

 ぼそっとつぶやきつつ起き上がったアルフレッドの向こうに、あきれ顔のフリードと苦笑しているリック、真っ赤な顔で頬を押さえているペペロネとキャンディがいた。

「本気じゃない。ふざけていただけだ」