王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-


「お前は大切だ。だからこそ、俺は剣を捨てない。お前は俺の強みにしかならない。さらっても脅しても無駄だと、広く知らしめるためだ。そうすれば、俺のせいでお前を取られることは減っていく」

 それでも傷つけられたら、シルディーヌの命はお終いである。

「本当にお前を刺す動きを見せれば、俺は瞬時に敵の腕を切り落としてやる。だからお前はなにも心配するな」

 アルフレッドの大きな手がシルディーヌの頬に伸びてくる。

「いつだってお前を守ってやる」

 夏空のような青い瞳は少しだけ潤んで見えて、珍しくもアルフレッドが切ない気持ちになっているのかと思う。

 ドSなのにこんな目もするのだと、意外な一面に感激と愛しさを覚えて、自分の目も潤むのを感じた。

「うん……信じてる」

 頬に手を添えられて、アルフレッドの顔が迫ってくる。

「……アルフ……」

 赤く色づいた小さな唇にアルフレッドのそれが徐々に近づいてきて……。

 シルディーヌは今が絶好の機会とばかりにグッと掴んだ冠を、アルフレッドの頭にスポッと被せた。大きさもぴったり。大成功である。

「やったわ!」

 シルディーヌはグッと拳を握り、喜びを噛みしめる。