王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-


 どうやら、シルディーヌの目論見はお見通しのようである。

「そ、そうよね。でもこれは違うの。えっと……クローバーのリースを作るんだもの」

「ほう? それで、また執務室に飾るつもりか。お前も飽きないな」

「そう……そうよ。私の快適空間づくりには終わりがないの」

 アルフレッドが手を離したので、シルディーヌは冠作りを再開する。

「持ち帰ってもすぐに枯れちまうだろう。草の生命力は弱いもんだ」

 枯れてもいいのだ。今、役目を果たせればシルディーヌは満足である。

 せっせと冠の制作を進めつつ、知恵を絞る。いざ頭に被せる時のために隙を作らねばならない。気を逸らす手立てはないものか……。

 ──アルフを怯ませる話題をふれば、いけるかもしれないわ!

 完成した冠をひざの上に置き、アルフレッドをじっと見つめた。

「そういえば、アルフは私が人質にされても剣を捨てなかったわ。逆に『やってみろ』なんて、すごく怖かったわ……私が傷つけられても平気なの?」

「大事じゃないの?」と唇を尖らせると、アルフレッドは一瞬声を詰まらせたようだった。