「ああ、もう。この家に上げたのは、俺の両親以外お前だけだ。よく覚えとけ」

祐吾が念押しで言ってやると、奈々は更に満面の笑みで幸せそうに笑った。そんな奈々に祐吾もつられて笑う。

「お前、本当に二十七歳か?子供っぽいな」

「むっ。そういえば祐吾さんの年齢聞いてませんでした」

よく考えたら奈々の年齢は聞いたけれど自分の年齢は告げていなかったことに気づく。
祐吾はコホンとひとつ咳払いをして言った。

「俺はな、奈々と同じ生まれ年だ。ただし、早生まれだから学年はひとつ上な」

「……同い年」

「違う。学年はひとつ上だ。それに誕生日は過ぎたから二十八だ」

「え~。一緒のようなもんじゃん~」

祐吾の年齢を聞いて奈々は頬を膨らます。

「祐吾さんは大人びて見える」

そう言って、さらに膨れた。

そんなたわいもない会話が何ともくすぐったくて幸せで、どちらからともなく自然と笑顔になってしまう。

「祐吾さん、朝ごはんにしましょう」

奈々は立ち上がるとキッチンへ入って行った。あまり使われていないであろう綺麗なキッチンで作業しながら、何だか新婚さんみたいだな、と奈々は一人嬉しくなって赤面する。

食パンをトーストしながら「そうだ」と、カウンター越しに言う。

「食材が無さすぎて何も作れないんです。後で一緒にスーパーに行きましょうよ」

「土日は出歩かないんじゃなかったのか?」

「背に腹は変えられません。しゃべらなければ大丈夫!」

「何だそれ」

ツッコミながらも祐吾は笑った。
昨日食べた息スッキリタブレットが項をなしたか、ニンニク臭は気にならなかった。