「またダメだったの。生理がきちゃった」

「そうか、残念だったな」

帰宅した祐吾に報告すると、祐吾は頭をポンポンと撫でてくれる。それが嬉しいのに、でも何故か悔しい。

躍起になっているのは自分だけなのではないか、こんなに冷静でいられる祐吾は本当は子供なんてほしくないのではないか、そんな風に考えてしまう。

言わなくとも不満さが顔に出ていたようで、祐吾はそれに気付くと小さく息を吐いた。

「奈々、そんなに無理することはないんだ。そりゃ子供はほしいけどこればっかりは授かり物だろう?」

「それはわかってる。でもみんな期待してるよ。お父さんにも祐吾さんのご両親にも、孫を見せてあげたいよ」

「お前、誰のために産むつもりだよ?人のための義務感に駆られてるならやめろ」

必死に訴えるも、祐吾の鋭い目付きと厳しい言葉に奈々は口をつぐんだ。

祐吾の言うことはもっともだ。

誰のために産むのか。
奈々と祐吾が望んで初めて子供ができる。
その延長線上に両親への想いがあるわけで、子供がほしい言い訳に出していいものではない。

「……ごめんなさい」

自分より大人な考えの祐吾に若干悔しさを覚えながらも、奈々は素直に謝った。同時にそんな躍起になっていた自分を反省し、心を落ち着けるため深呼吸をする。

と、ふいに腕を取られ引き寄せられ、奈々は祐吾の胸の中にすっぽりとおさまった。

「俺だって早く子供がほしいよ」

「……うん」

「それにそういう奈々の優しい気持ち、空にいる赤ちゃんに届いていると思う。だから、そのうちきっときてくれる」

「……うん」

耳に心地よく響く祐吾の低く優しい声に、奈々は目頭が熱くなった。