電車をおり、水族館に到着した。
入場料を払って、ほぼ一本道を進む。基本的に青っぽい内装で、大きな水槽の中に魚がいて泳いでいる。
館内に入って数分後、美しく綺麗な生き物を見つけた。半透明で、一つの大きな水槽の中を泳いでいる。
「廉、廉!クラゲ見ようぜ!」
廉に呼びかけ後ろを振り向くと、彼はいなかった。
「れ、ん……?」
なぜいなくなったのかわからない。そんなに人が多くいたわけじゃないし、なんなら空いているはずだ。なのになぜか廉はいなかった。
俺と一緒にいるのが嫌になったのか?
不安になるこの気持ちをどうにかしたかった。早く安心したかった。
やっと付き合えて幸せになれると思ったのに、相手がいないんじゃ幸せにはなれない。
「廉……!!」
彼を呼んでみるが、彼からの返事はなかった。
館内を慌てて探してみる。トイレや色んな場所を。途中、イルカやら亀やら生き物を見たが、一人で見ても楽しくはなかった。
「あれ?司くん??どうしたの?慌てて」
館内から出て外にあるトイレに入る瞬間、廉が出てきた。手を洗ったのだろう。濡れた手をハンカチで拭いている廉が現れ、心底ビックリした。
「おま……っ!」
頭の上にはてなマークを浮かべた様子の彼に、俺は何も言えなくなった。悪気がないような感じで、きょとんとしている。
「あ、そっか!トイレに行くって伝えてなかったもんね。ごめんね、司くん」
「あ、いや……」
ニコニコ笑顔で謝る廉を見て、なんかもう馬鹿らしく感じた。だけど、一言、伝えてほしかった。不安な気持ちはどう足掻いても取り除くことはできないようだ。
「……手、繋ごう…………」
「……え?」
「何があってもいいように……」
「……あ、うん……」
そっぽを向いて少し頬を赤くして俺は言ってしまった。おかげで廉がどんな顔してるか見れなかった。嫌じゃないといいんだけど。
いや、でもここは勇気を振り絞って廉を見てみたい……ような気もしなくもない。どうしたものか。
もう一度、館内に入り、二人で色々なものを見た。
「クラゲ、一緒に見たかったんだけどな……」
「今見れてるけど?」
「テンション上がった時に見るクラゲと、心配したあとに見るクラゲとじゃ意味が違う」
「へぇ……そういうもんなんだね」
クラゲを見ている廉を見ながら、俺は少しだけテンションが上がった。先程まであれだけ心配したのに。
今まで感情を抑えてきたから冷静に彼を探すことが出来たと思う。だけど今は彼は俺の“恋人”なんだ。心配しないわけがない。
冷静だった時は、きっとすぐに彼がトイレにいると思うはずだ。なのに焦った瞬間、彼がどこにいるかわからなくなってしまった。まさかここまで彼のことを心配するだなんて思ってもみなかったんだかどな。
「司くん?」
「ん?」
「サメ見よ!」
「……は?」
「サメ!」
「お、おう……?」
繋いでいた手を廉は引っ張ってサメがいる場所まで連れて行かれた。
大きな水槽にサメは泳いでいた。なんか変な気分だ。
「サメ、好きなのか?」
「ううん、全く好きじゃない。怖そうじゃない?」
確かに怖そうではあるが。女子力の高そうな彼ならば、可愛い魚が好きなんだと思っていたのだが。偏見がすぎると彼に悪いのかもしれないな。
「好きじゃねぇのかよ……」
ボソッと呟くと、廉は俺を見て物凄く嬉しそうに微笑んだ。心からの満面の笑みだ。
「え、は……!?」
「司くんのその口調好きなんだぁ」
そう言って廉は本当に幸せそうに笑う。しかも水の反射でいい感じの光具合。館内は薄暗いから映える。
すぐさま携帯を取りだし、カメラ機能を表示する。
パシャ
「うわっ!なっ……え……!?」
目を点にする勢いで彼は驚いていた。まぁ仕方がないか。急に写真撮られて驚かない人なんかいないもんな。
「ごめんごめん。あまりにも廉が綺麗だったから」
「……っ!!」
顔を赤くした廉に対して俺は首を傾げた。というか、なんかこっちまで恥ずかしくなってしまう。
「い、いい今のは忘れろ!」
恥ずかしいから、とは言わなかった。言ったら廉が調子に乗る気がしたから。
「司くんのバカ……」
「……は?──って、おいちょっと待てって! 」
廉は躊躇うことなく前を歩き始めた。俺と手を繋いだまま。だから俺は廉にまた引っ張られた。
入場料を払って、ほぼ一本道を進む。基本的に青っぽい内装で、大きな水槽の中に魚がいて泳いでいる。
館内に入って数分後、美しく綺麗な生き物を見つけた。半透明で、一つの大きな水槽の中を泳いでいる。
「廉、廉!クラゲ見ようぜ!」
廉に呼びかけ後ろを振り向くと、彼はいなかった。
「れ、ん……?」
なぜいなくなったのかわからない。そんなに人が多くいたわけじゃないし、なんなら空いているはずだ。なのになぜか廉はいなかった。
俺と一緒にいるのが嫌になったのか?
不安になるこの気持ちをどうにかしたかった。早く安心したかった。
やっと付き合えて幸せになれると思ったのに、相手がいないんじゃ幸せにはなれない。
「廉……!!」
彼を呼んでみるが、彼からの返事はなかった。
館内を慌てて探してみる。トイレや色んな場所を。途中、イルカやら亀やら生き物を見たが、一人で見ても楽しくはなかった。
「あれ?司くん??どうしたの?慌てて」
館内から出て外にあるトイレに入る瞬間、廉が出てきた。手を洗ったのだろう。濡れた手をハンカチで拭いている廉が現れ、心底ビックリした。
「おま……っ!」
頭の上にはてなマークを浮かべた様子の彼に、俺は何も言えなくなった。悪気がないような感じで、きょとんとしている。
「あ、そっか!トイレに行くって伝えてなかったもんね。ごめんね、司くん」
「あ、いや……」
ニコニコ笑顔で謝る廉を見て、なんかもう馬鹿らしく感じた。だけど、一言、伝えてほしかった。不安な気持ちはどう足掻いても取り除くことはできないようだ。
「……手、繋ごう…………」
「……え?」
「何があってもいいように……」
「……あ、うん……」
そっぽを向いて少し頬を赤くして俺は言ってしまった。おかげで廉がどんな顔してるか見れなかった。嫌じゃないといいんだけど。
いや、でもここは勇気を振り絞って廉を見てみたい……ような気もしなくもない。どうしたものか。
もう一度、館内に入り、二人で色々なものを見た。
「クラゲ、一緒に見たかったんだけどな……」
「今見れてるけど?」
「テンション上がった時に見るクラゲと、心配したあとに見るクラゲとじゃ意味が違う」
「へぇ……そういうもんなんだね」
クラゲを見ている廉を見ながら、俺は少しだけテンションが上がった。先程まであれだけ心配したのに。
今まで感情を抑えてきたから冷静に彼を探すことが出来たと思う。だけど今は彼は俺の“恋人”なんだ。心配しないわけがない。
冷静だった時は、きっとすぐに彼がトイレにいると思うはずだ。なのに焦った瞬間、彼がどこにいるかわからなくなってしまった。まさかここまで彼のことを心配するだなんて思ってもみなかったんだかどな。
「司くん?」
「ん?」
「サメ見よ!」
「……は?」
「サメ!」
「お、おう……?」
繋いでいた手を廉は引っ張ってサメがいる場所まで連れて行かれた。
大きな水槽にサメは泳いでいた。なんか変な気分だ。
「サメ、好きなのか?」
「ううん、全く好きじゃない。怖そうじゃない?」
確かに怖そうではあるが。女子力の高そうな彼ならば、可愛い魚が好きなんだと思っていたのだが。偏見がすぎると彼に悪いのかもしれないな。
「好きじゃねぇのかよ……」
ボソッと呟くと、廉は俺を見て物凄く嬉しそうに微笑んだ。心からの満面の笑みだ。
「え、は……!?」
「司くんのその口調好きなんだぁ」
そう言って廉は本当に幸せそうに笑う。しかも水の反射でいい感じの光具合。館内は薄暗いから映える。
すぐさま携帯を取りだし、カメラ機能を表示する。
パシャ
「うわっ!なっ……え……!?」
目を点にする勢いで彼は驚いていた。まぁ仕方がないか。急に写真撮られて驚かない人なんかいないもんな。
「ごめんごめん。あまりにも廉が綺麗だったから」
「……っ!!」
顔を赤くした廉に対して俺は首を傾げた。というか、なんかこっちまで恥ずかしくなってしまう。
「い、いい今のは忘れろ!」
恥ずかしいから、とは言わなかった。言ったら廉が調子に乗る気がしたから。
「司くんのバカ……」
「……は?──って、おいちょっと待てって! 」
廉は躊躇うことなく前を歩き始めた。俺と手を繋いだまま。だから俺は廉にまた引っ張られた。