走っている途中、携帯を取り出して廉の携帯の番号にかけた。出るかなんて知らないが、ただただ出てくれることを望んで。

『もしもし?』

何回目かの呼出音で廉が電話に出た。

「廉か!?」

『そうだよ。どーしたの?慌てて。何かあったの?』

廉はまだ知らない。佐々木さんがもう廉のことを好きじゃないことを。でも俺から伝える勇気はないから、どちらかが相手のことを振ることを見守るしかできない。それに今回ばかりば俺の出る幕ではないのだから。

「今からそっちに向かう! 今どこにいる?」

『え? 家だよ……』

「わかった! 待ってろ!!」

『司くん!? 走ってる?』

「走ってるけど……」

『ゆっくりおいでよ』

「いや……至急伝えたいことなんだ。だから走る」

『そうなの? ならいいけど……コケないでね?』

「コケないよ、大丈夫」

そうして俺は電話を切り、一目散に廉の家へと向かった。彼が待っている場所に。彼の彼女から勇気をもらって。

彼に振られる覚悟で。
彼に嫌われは覚悟で。
恋する乙女は本当にすごい。恋する人みんなすごい。綺麗で可愛くてかっこよくて優しくて……そして関係が壊れるかもしれない覚悟で告白する。どうしてそんなことができるんだろう。俺にはそんな勇気なかったのに。

恋する人の勇気が手に入った今、俺は好きな人に一途なこの気持ちを伝えるしかない。佐々木さんに勇気を貰ったんだから。

叶えて見せよう。俺ならできる。己を信じない人に周りが応えてくれるわけないだろ?