「それでお話とは…?」

下を向いて、紅茶を眺めていた佐々木さんの俺は問う。

彼女は決心したかのように、勢いよく顔を上げて俺の目を見た。

「言っておかないと後悔すると思ったんです」

「………」

これは黙って聞いた方がいいな。

「私、好きな人が出来ても絶対に誰かに邪魔されたんです。だから今度こそは誰にも邪魔されたくない」

佐々木さんは笑っているけど、泣きそうでもあった。

たくさん努力したんだろう。好きな人に好かれるように努力して、それでもダメで。

俺なんかよりもたくさん頑張ってる。俺は全く努力してない。

廉に嫌われるのが怖くて、告白できない。告白したら二度にと、廉と話すことが出来なくなるかもしれないと思って告れない。

関係を崩したくなくて──好きな人に告ることから逃げてきた。

「黒森くん」

佐々木さんは、真っ直ぐに俺の目を見て言った。

「私はあなたが好きです。付き合ってもらえませんか?」